玉切り整理はしない?

昔から、間伐して材を搬出しな場合には、伐倒した木を動かせるくらいの長さに玉切りし、等高線状に切り株や残った木を利用しながら、棚状に並べるということが行われてきました。

森林整備工事の仕様でも、玉切り、整理、として作業方法が定められています。

こうすれば、間伐後の林内は歩きやすく、また見た目もいかにも手の入った森林に見えます。

しかし、森林保育という間伐の本来の目的から考えた場合には、このような作業は不必要なばかりでなく、かえって災害の原因にさえなりかねません。

玉切り・整理をしたほうが良い場合

人が立ち入ることが目的の森林整備

林内で山菜や茸を育てたり、森林療法や林業体験などで頻繁に人が入ることを目的とした森林では、安全に歩ける、見た目がきれい、という要素も必要です。このような森林で間伐を行い搬出をしない場合には、ある程度の材の集積も必要になるでしょう。

薪などとして、あとで利用する場合

いわゆる里山的な森林で、間伐材を少しずつ運び出して利用する場合には、後で利用しやすいように、玉切ったり、集積したりする必要があります。

このような里山の使い方が、結果的に小動物や昆虫の成育環境*1をつくってきました。

林床に保護すべき植物などがある場合

本来このような場所に人工林をつくるべきかという問題もありますが、人工林でもあとから貴重な植物が入ってきて定着する場合もあります。また隣接地にこのような場所があるときも注意が必要です。

伐倒したままの方が良い場合

上記以外の森林

一般的に用材生産や治山・治水を目的とした森林の場合。林木の生育とそれによる土壌保護が目的なので、玉切り・整理は不要だと考えられます。

燃料と労力のムダ

特に急斜面では、伐倒した木を玉切り、水平になるように動かし、積み上げるというのは大変な重労働です。太い木の場合は、動かしやすいように、いくつもに短く切るためにチェーンソーの燃料やオイルを大量に消費してしまいます。

玉切った材は流されやすい

伐倒した材が動き出さないように、水平に切って切り株などにしっかりかける必要があると考えられてきました。しかし、倒したまま枝もはらわないでおけば、動きだす可能性はとても低いのです。大雨が降ると、玉切りした材が沢に流れ出し、下流での災害の原因になる危険はむしろ高くなります。

幹を地面に着ければはやく土に還える?

地面から浮いた状態よりは、はやく腐ります。でも長期的に見れば、どのような状態でも雨ざらしの材は腐って土にかえります。その時間の差は林業的に問題とは思えません。

林内を歩くのに危険

頻繁に山の見回りをするよう場合には確かに歩きにくいという問題はあります。しかし切り捨て間伐段階の若い人工林の場合、それほど頻繁に見回りをする必要は低いと思われます。林内歩道さえ確保しておけば充分ではないでしょうか。

むしろ大型動物の進入を防ぐ効果のほうが重要かもしれません。

伝統的な工法だが

おそらく、薪炭としての利用が重要だった時代からの伝統的なやり方が残ったものだと思われます。

山仕事のかなりの部分が地拵え作業だった拡大造林時代に確立した棚づくりの手法が、一時期盛んに行われた森林景観整備事業に取り入れられたということも考えられます。

いまだに、山仕事=山掃除という考え方が山村には残っているので、間伐後も玉切・整理して、棚をつくるような仕事を、良い仕事と評価する人は多いのです。

しかし、通常の補助事業ではこのような景観整備的作業まで積算されていないので、費用負担が大きくなってしまいます。結果的に森林整備を遅らせる遠因とも言えます。

特に治山事業においては、逆効果とも言える作業なので、特別な目的がある場合以外には、設計段階からはずしておくべきです。

設計上、玉切り・整理 が計上してあると、何もしないわけにはいきません。しかし現場によって、また設計担当者によって対応が統一されていないという問題があります。


*1 エコスタックと呼ばれるもの、自然状態のままよりも集中するので人目に触れやすいともいえる